人間は、難しい生きものだ。
例えば好きな人や家族と一緒にいるのは、楽しくて幸せだけど、ときどきそれが息苦しくなって一人になりたくなる。チームで行動することは、助け合える充実感があるけれど、自分が思っている方向と違ってきてしまって「もう、やってられない」と感じるときもある。でも、そういう気持ちが起きても、自分は人と違っているとか、浮いているなどと悩む必要はない。だって、人間という生きものは、本来そういうものなのだ。それが、人間のやっかいで面白いところだ。
だって、太古の昔、猿人から人類が進化し世界中に広がっていったのは、そういう周りとは違う自分を感じて、集団から離れ、命の危険も省みず旅を続けた祖先がいたからなのだ。あなたも、その遺伝子を持っているのだ。どうも日本人は、個性的であることにひけ目を感じる。みんなと同じほうが、安心できるという特性が強い。でも、自分の個性を誇りに思い、個性を出し合いながら、共存していくことだってできるはずなのだ。
著者の鎌田實氏は、被災者や患者との触れあいを通して、どうしたら人間が幸せに生きられるのかを、いつも考え続けてきた。辛いことがあっても、それを乗り越えて、充実感を感じて生きるためには、何が必要なのかを、模索してきた。
その答えをみつけるために、鎌田實氏は、とうとう人類発生の地アフリカまで行った。また、古代文明が栄えたギリシャやエジプトにも足を運んだ。ピースボートに乗り込み、あらゆる国籍の老若男女と、話し合いを重ねた。6年間の歳月を費やして、「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々は何処へいくのか」を考え続けた。一人でも多くの人が、幸福になる方法を探して。
もちろん、まだ、答えが出たわけではない。でも、自分らしさ、自分の中の人とは違う「ヘンテコ」なところを、ありのまま認めて、それを生かしていく。他人の中の「ヘンテコ」で困った部分を、受け入れる。生かしてあげる。そういうことが必要なのではないかと思うに至った。本書は、有名無名のさまざまな人々生き方と言葉を通して、人間という生きものの面白さを追及したエッセイです。(くわしくはこちら。試し読みできます。)
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